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のこぎり(鋸)と北斎

 
のこぎりの写真

【前引大鋸】

左の写真の鋸の呼び名は、「前引大鋸」(まえびきおが)で、製材用の縦挽き鋸です。

室町時代に中国から渡来した大鋸は、二人扱いの大型で長さ約2メートルもあり、日本人の好みや習癖にあわなかったため、わずか100〜200年で日本から姿を消しました。

消滅した大鋸に代わって縦挽専用として登場するのが前挽大鋸と鑼(かがり)です。

ちなみに鋸屑のことを『オガ屑』といっているが、これは大鋸で挽いた時にできる切屑のことをいいます。

【北斎の遠江山中】

前挽大鋸の使用法は、葛飾北斎の富嶽三十六景の「遠江山中(とおとうみさんちゅう)」(下図)に描かれてます。

遠江山中

【北斎の生きざま】

北斎は、75歳の天保5年(1834年)さらに独自の境地に入り、風景絵本の傑作「富嶽百景」初編を上梓し、跋文(ばつぶん)で、大きな決意を発表しています。

「自分は六歳のころから絵を描きだしたが、七十歳ころまでの作品には、取るに足りるようなものはなかった」

そして「七十三歳で幾らか物の本質が分かるようになった」、
だから、努力を怠らなければ「八十歳になればもっと進歩し、九十歳で奥意をきわめ、
百歳では神業のように上達できるのではないか、

そして百何十歳まで努力を続ければ対象物の一点一格も、まるで生きているかのように描けることだろう」
「長寿の君主、私の言葉は妄想ではないと受け止めて欲しい」と。

私は、北斎の努力に努力を重ね極めようとする姿勢・生き方が好きです。
北斎と出会って10数年、資料をたくさん集め研究をしています。

【「富嶽百景」初編跋文の原文】

己六才より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(へき)ありて 半百の此(ころ)より数々(しばしば)画図(ぐゎず)を顕(あらは)すといえども
七十年前画(えが)く所は実に取るに足(たる)ものなし

七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚(ちやうじうちうぎよ)の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み九十才にして
猶其奥意(なおそのおうい)を極め 一百歳にして正に神妙ならん与欠(か)

百有(いう)十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願くば長寿の君子予言(よこと)の妄(まう)ならざるを見たまふべし

画狂老人卍述


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